行為判定
TRPGは「ルールのあるごっこ遊び」という例えをしました。この章では「ルール」部分について説明していきます。
このページで紹介している判定ルールは、このゲームのルールの中で最も基本になるルールです。戦闘中の判定も、呪文を使う判定も、走る・跳ぶ・泳ぐ判定も、読んだ本の内容を思い出す判定も、この方法で行われます。ゲームをスムーズに進行できるように、ルールを把握しておきましょう。
行為判定とは
岩壁をのぼり、崖を跳び越え、文献を調べ、罠を外し―――冒険は常に困難への挑戦です。こうした行動が全て意図した通りに運べるわけではありません。キャラクターが試みようとする行動が成功か失敗か、どの程度の成功なのかを判断するために、TRPGではダイスを用いた作業を行います。これを「行為判定」と呼びます。
ダイスの種類と数
TRPGでは、キャラクターが採った行動が成功したかどうかを乱数を用いて判定します。このゲームでは、乱数は6面ダイスを使用します。何個のダイスを振るのかは状況によって変化しますが(後述します)、最終的には「3d6(ダイス3個の合計)」が、判定の結果を求める数値として採用されます。
このゲームでは、ダイスの出目は大きければ大きいほど、いい結果と評価されます。
行為判定の手順
行為判定は以下の手順を踏んで行われます。
- GMの承諾を取る
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キャラクターに何を行わせたいか思いついたら、プレイヤーはGMに提案し、GMの承諾を取ります。
プレイヤーが提案した行動について、GMは判定を許可するか、却下するかを判断して伝えます。GMから「判定してもよい」と承諾が出たら、プレイヤーは判定を行うことができます。
「判定を行う前に、GMの承諾を得る」。プレイヤーは、この順序を忘れないようにしてください。GMの許可なく勝手に判定を行った場合、その結果は善し悪しに関わらず、原則として判定結果は無効となります。
- 判定条件の提示
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プレイヤーの行動を許可したら、GMは「基準値」「目標値」「行為修正」の3つをプレイヤーに提示します。
詳しくは追々解説していきますが、最終的には{水泳/素早さ:C}-1個修正のように提示されることになります。
- 行動の意思決定
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プレイヤーは、GMから提示された条件を見てから、判定をするか、行動を取りやめるかを決めることができます。成功には厳し過ぎると感じたら、撤退する勇気も時には肝心です。
ただし、GMから判定を指示されている場合には、行動(判定)は取りやめることはできません。また、キャラクターが何らかの理由でプレイヤーのコントロールから外れている場合も、取りやめはできません。
- 成功評価を求める
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行動することに決めたら、「判定条件」に従って判定を行います。
ダイスを振って「成功評価」を求めたら、GMに伝えます。GMから結果を返されたら、一連の判定は終了です。
基準値
「基準値」とは、判定の成否に用いる基本的なデータです。行為判定においては「心得と能力値」がこれに該当します(戦闘ルールでは「戦闘技能(〈攻撃力〉や〈守備力〉など)」、呪文ルールでは「特殊技能(〈呪文力〉や〈抵抗力〉)」となります)
「心得は能力値を細分化したもの」なので、心得と能力値は密接な関係にあるステータスです。GMは、プレイヤーが宣言した行動が、どの心得が掌る行為にあたるかを診断して、プレイヤーに伝えます。プレイヤーは、その心得が属している能力値を「基準値」として判定を行うことになります。
能力値と判定の種類
- 力業判定
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能力値:〈筋力〉
心得:{穴掘り} {石工} {鍛冶屋} {建設} {大工} {力業} {伐採} {船乗り}
- 耐久判定
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肉体労働や持久力、意識を失わないための耐久など、長時間行動に必要な行為の判定です。主として判定結果は仕事効率や疲労効率、行為継続の可否に関するものになります。
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能力値:〈体力〉
心得:{行軍} {呼吸法} {持久力} {酒豪} {生存術} {体調管理} {鍛錬} {徹夜} {統率}
- 運動判定
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身体を大きく動かす判定です。
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能力値:〈素早さ〉
心得:{軽業} {忍び} {ジャンプ} {乗馬} {水泳} {ダンス} {登攀} {突破}
- 作業判定
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手先の細かな作業に関する判定です。判定によっては、道具や施設が必要になる場合もあります。
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能力値:〈器用さ〉
心得:{楽器} {手当て} {手業} {投擲} {トラップ} {武具修理} {変装} {猟師}
- 作成判定
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何かものを作るための判定です。作業判定のひとつですが、作成されたものが手元に残るところが異なります。成功評価によって作成物の品質や数量に差異が発生します。判定に失敗した場合、再挑戦するよりは、失敗作として廃棄するのが一般的でしょう。
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能力値:〈器用さ〉
心得:{飾細工} {工作} {裁縫} {雑貨屋} {調合} {彫刻} {彫塑}
- 知覚判定
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キャラクターが知覚で情報を得られるかどうか、気づくかどうかを決めるための判定です。
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能力値:〈鋭敏さ〉
心得:{監視} {聞き耳} {暗闇順応} {慧眼} {時間感覚} {心理眼} {第六感} {探索} {風味感} {方向感覚}
- 知識判定
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キャラクターが知っているかどうかを決めるための判定です。
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能力値:〈賢さ〉
心得:{医師} {演出} {会話} {基礎教養} {建築学} {鉱物知識} {国家知識} {昆虫知識} {獣医} {植物知識} {水棲知識} {政治} {戦術眼} {戦略} {知覚記憶} {伝承知識} {動物知識} {読文} {土地勘} {農学} {美術鑑定} {法律} {身振り} {マネジメント} {モンスター対策学} {薬学}
- 交渉判定
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能力値:〈賢さ〉
心得:{裏社会} {事情通} {商売通} {取引} {表現力} {弁舌} {礼儀作法} {話術}
- 魔術判定
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能力値:〈魔力〉
心得:{色事} {占い} {絵画} {語り部} {ガラス工芸} {詩人} {念力} {まじない} {魔法学} {魔力感知} {龍脈学} {霊感}
- 精神判定
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能力値:〈幸運さ〉
心得:{癒し} {音楽} {家事業} {歌唱} {御者} {漁撈} {子守り} {飼育} {庭師} {農業} {舞い} {瞑想} {理容} {料理}
行為修正
キャラクターが行う行為が、ちょっとした不利な状況や、有利な状況で判定を行う場合、「行為修正」を使用します。
行為修正は、判定の仕組みは変わりませんが、使用するダイスの数が変わります。
有利な修正(+N個修正)
有利な修正が付く場合は、「〈素早さ〉+2個判定」のように表されます。
文字通り、修正の個数だけダイスを足して振ります(+2個修正なら、2個増やして5個のダイスを振るわけです)。
振った出目のうち、大きい方から3つを採用します(+2個修正なら、小さい出目の2個を除外して3個にするわけです)。
ただし、出目の中に「1・1・1」か「1・1・2」の組み合わせが含まれていたら、ダイスを選ぶことなく「痛恨」の判定結果になります。
有利な修正は「+1個修正~+3個修正」の間で与えられ、どんなに条件が重なっても+3個修正が上限になります。
不利な修正(-N個修正)
不利な修正が付く場合は、「〈素早さ〉-2個判定」のように表されます。
文字通りにダイスを減らしてしまうと、3個ではなくなってしまいます。そこで、不利な修正の場合も修正の個数だけダイスを足して振ります(-2個修正なら、2個増やして5個のダイスを振るわけです)。
振った出目のうち、今度は小さい方から3つを採用します(-2個修正なら、大きい出目の2個を除外して3個にするわけです)。
ただし、出目の中に「5・6・6」か「6・6・6」の組み合わせが含まれていたら、ダイスを選ぶことなく「会心」の判定結果になります。
不利な修正は「-1個修正~-3個修正」の間で課せられ、どんなに条件が重なっても「-3個修正」が下限で、これ以上悪い修正が付くことはありません(GM判断で判定不可としても構いません)。
「有利な修正」と「不利な修正」が同時にかかった場合
もしも1つの判定で複数の条件が重なり、「有利な修正」と「不利な修正」が同時にかかった時は、単純に全てを足して最終的な修正を決定します。「+2個修正と-1個修正」なら「+2 -1 = +1」なので「+1個修正」、「+2個修正と-2個修正と-2個修正」なら「+2 -2 -2 = -2」なので「-2個修正」となるわけです。
この場合でも、計算結果は「-3個修正~+3個修正」の範囲になることは忘れないようにしてください。
成功評価
行為判定は「成功評価」を求めることで成功/失敗がほぼ決定します。
「成功評価」は成功度のようなもので、プレイヤーが宣言した行為が成功するかどうか、または、どれくらい成功したのかを判別します。[A評価] [B評価] [C評価] [D評価] [E評価]の5段階があります。
A評価 |
本職からも見事としか言いようがない。芸術的な成果。これでも成功しなければ、やらざるを得ない状況の方が悪い。 |
---|---|
B評価 |
プロフェッショナルな良い出来。質も量も見栄えも文句無しの成果。さすが本職と思わせることができる。 |
C評価 |
並みの出来。本職のお仕事としては物足りなさを感じるが、素人がやったことなら十分な成果。大体のことなら許容範囲。 |
D評価 |
あまり良くないギリギリの成果。成功とは言いにくいが、難しい行為でなければ失敗というほどでもない。 |
E評価 |
ひどい出来。もはや失敗。状況によっては危険に晒されるようなこともあり得る。 |
成功評価表
成功評価は、能力値判定によって求められます。能力値が高いほど、3d6の出目が大きいほど、良い結果を得やすくなります。また、行為に適した心得があると、判定結果や判定方法がさらに有利になります。
「行為判定/成功評価 対照表」の、能力値の行(ヨコ)と、3d6の出目の列(タテ)が交差する所が、求められた成功評価です。
能力値 | 5~7 | 8 | 9~10 | 11 | 12~13 | 14 | 15 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | E | E | E | D | D | C | B |
2 | E | E | D | D | C | C | B |
3 | E | D | D | C | C | B | A |
4 | E | D | C | C | C | B | A |
5 | E | D | C | C | B | B | A |
6 | E | D | C | C | B | A | A |
7 | E | D | C | B | B | A | A |
8 | E | D | C | B | B | A | A |
出目と「会心」「痛恨」
このゲームでは、クリティカル(絶対的成功)を「会心」、ファンブル(絶対的失敗)を「痛恨」と呼びます。
基本的には「会心」は「A評価」、「痛恨」は「E評価」と同じ結果として扱われます。戦闘ルールでは、さらに特別な効果が追加されます(「戦闘ルール」参照)。戦闘以外の判定でも、特にルールで明記されている場合や、GMが望むのであれば、さらに特別な効果が追加される可能性があります。
「会心」「痛恨」は、成功評価に左右されずにダイス運だけで現れることもあります。出目だけで「会心」「痛恨」となる確率は決して高くありません(1.85%)が、どんなに達人であっても「痛恨」の恐怖から逃れることはできず、どんなに素人であっても「会心」は不可能ではないことになります。
判定結果が「会心」「痛恨」となるのは以下の時です。
判定結果が「会心」になる場合
- 判定時の3d6の出目が「17」「18」だった時。
- 3個ゾロ目でA~C評価になった時。
- 判定に使用する心得が4レベル以上あれば、出目が「16」でも「会心」になります。
判定結果が「痛恨」になる場合
- 判定時の3d6の出目が「3」「4」だった時。
- 3個ゾロ目でE評価になった時。
- 判定に使用する心得が1レベルもない場合、出目が「5」でも「痛恨」になります。
目標値
行為が難しい判定の場合、普通なら成功する評価でも失敗になってしまう可能性があります。あまりに難しい行為の場合、「目標値」が提示されることがあります。
目標値は、成功するのに必要な「成功評価」で表されます。「目標値なし」「目標値C」「目標値B」「目標値A」の4段階があり(「判定不要」「判定不可」も含めると6段階)、能力値と組み合わせて「〈素早さ〉判定」「〈素早さ:C〉判定」「〈素早さ:B〉判定」「〈素早さ:A〉判定」のように表記されます。
以下に目標値の目安を挙げますが、必要かどうか迷うようなら「目標値なし」にしても構わないでしょう。
目標値 | D評価 | C評価 | B評価 | A評価 | 目安 |
---|---|---|---|---|---|
判定不要 | - | - | - | - |
判定なしでも成功する簡単な行為(例:ゆっくりとマッチで火をつける) |
目標値なし | 可 | 成功 | 大成功 | 大成功 |
普通の人でもまぁまぁ成功できる行為(例:ダーツを10歩先の的に当てる) |
目標値C | 失敗 | 成功 | 大成功 | 大成功 |
技術的なコツや専門的な知識がいる行為(例:野外で道具を作って火をつける) |
目標値B | 失敗 | 失敗 | 成功 | 大成功 |
シビアな技術や知識を求められる行為(例:高い所に張られたロープの上を歩く) |
目標値A | 失敗 | 失敗 | 失敗 | 成功 |
運や胆力が必要となる行為(例:100歩先の子供の頭の上に乗せたリンゴを矢で射抜く) |
判定不可 | - | - | - | - |
判定するまでもない不可能な行為(例:岩山を殴って砕く) |
判定結果「大成功」について
判定結果「大成功」は、通常の成功より大きな成果を収めたことを意味します。作業時間を短縮できたり、その出来が芸術的であったりします。GMが演出してください。GMが解釈を思いつかないようであれば、通常の「成功」としてもいいでしょう(思いつかなくてゲームが止まってしまう弊害だけは避けてください)
「戦闘ルール」や「作成ルール」では、「大成功」には特殊な効果が付きます。詳しくは、それぞれのページを参照してください。
判定結果「可」について
判定結果「可」は「成功というより、失敗ではない」中途半端な結果を表します。
例えば、木登りであれば「登れなかったけど落ちることもなかった」、水泳であれば「前には進まなかったけど溺れることもなかった」、罠解除であれば「解除できなかったけど罠が発動することもなかった」…など。「時間を無駄にしただけで失敗ではない」ことが多いでしょう。
余分に時間がかかったけど解除できた、味が薄いけど食べられる料理になった、縫い目がちょっと曲がったけどちゃんと縫えた…など、単なる成功にリソースの浪費や出来の悪さ、不完全さを付加しても構いません(あまりペナルティにならない程度で)。
判定結果「可」も、GMが何も思いつかないようであれば通常の「成功」としてもいいでしょう。
難易度判定
「難易度判定」とは、判定時にプレイヤーに限られた情報だけを与え、手ごたえと情報分析によって、判定結果の本当の成否を予想してもらうことを意図した判定です。
行為判定の中には、「GMから伝えられた判定結果が、本当に成功/失敗したのか、プレイヤーには分からない方がいい」ものがあります。例えば、ダンジョンのドアに仕掛けられた罠を探して判定を行い、GMから「罠は見つからなかった」と伝えられたとします。この時、そのドアには本当に罠がなかったのか、それとも罠を探す判定に失敗したから見つからなかったのか…それは、キャラクターには分からないはずです。多くの知覚判定も同じです。見えなかったのか、それとも見分ける判定に失敗したのか?聞こえなかったのか、それとも聞き取る判定に失敗したのか?
しかし、普通に行為判定をすると、その成否はプレイヤーに丸分かりになってしまいます。「プレイヤーは分かっているが、キャラクターは分からないから、分からないふりをする」のも手ですが、GMならば「プレイヤーにも成否の分からないスリルを味わって楽しんで欲しい」と考えたくなるでしょう。そこで行うのが、「難易度判定」です。
難易度の設定
「難易度判定」は、本来は「3d6+行為修正の数のダイス」を振って判定を行うところ、プレイヤーは「2d6」だけを振り、残りの「1~4個」のダイスはGMが非公開で振る…という方法で行われます。
難易度判定は「プレイヤーに限られた情報だけを与え、手ごたえと情報分析によって、判定結果の本当の成否を予想してもらう」と紹介しました。「手ごたえと情報分析」とは、プレイヤーが振った2d6の出目と、使用した「心得(能力値)」のことを指します。もうひとつの「限られた情報」…それこそが、「難易度」です。